建物の表示登記とは

建物表題登記とは?

本来は固定資産の課税のための台帳から発展したものであり、役所が課税のためにするのですから建物を建築したら登記所が表題部を作成してくれたら面倒がなくてよいのですが、残念ながら日本のお役所はそこまで親切ではありません。(そのくせ、表題登記をしなくても、固定資産の課税は独自の調査でしっかりしてきます)
建物を新築したときは、1ヶ月以内に「建物表題登記」をしなければならないことが定められています。
これを登記義務と呼び、建物を新築した所有者に課せられています。
建物表題登記とは、建物の所在・構造・床面積などを記載した「表題部」を作成する登記で、建物の形状や土地のどの部分に配置されているかを示す「建物図面・各階平面図」も作成します。
いわば、登記簿のタイトルのようなものなのですが、この表題部が誤っていたりするとこのあとに所有権などの権利の登記をしても、どの建物に権利の登記をしたのかが正しく公示されず、後々トラブルの元となることもあります。

例えば、実際の建物は木造平家建なのに、登記簿の表題部が鉄骨造2階建てとなっていたとしたら、どうでしょう?
所有権移転する建物を誤認したり、所在が不明となったり、担保設定の評価を誤ったりするかもしれません。
現実には不動産の取引を現物を見ずに行うことはあまりないでしょうが、過去に見られた「原野商法」やバブ ルの時などは、現物を確認せずに登記簿のみで取引が行われていたこともありました。
また、不動産に銀行融資の抵当権を設定したりする場合、実際の建物と登記簿上の表示が違っていれば、銀行などから現状と登記簿をあわせる登記(表題部変更登記)を求められるでしょう。
もし、将来抵当権を実行して競売にかける場合に、不都合が起きるからです。
そこで、そういったことが起きないように、登記情報に現実の不動産の状態を正確に反映させる必要があり、所有権や抵当権の登記とは正確を異にするなどから、表題登記は「土地家屋調査士」が代理人となって申請することとなりました。

建物表題登記をしないとどうなる?

一応、不動産登記法には建物を新築・増改築(床面積の減少を含む)・滅失をしたときは1か月以内に表題登記等をしなさいと書いてあり、登記義務があるとされています。
しかし、現実には罰則規定も無く、登記所から催促もないことから、融資を受ける際の担保にするなどの事情がなければ、登記をしない方がいることもよくあります。
実際に、建てる敷地を既に所有していたり、親類所有の土地に建物を建てる場合など、建築費用を現金で支払った場合などは登記をせずにいる場合もよく目にします。
しかし、そういった場合でも後々相続などが発生した場合は登記名義が必要となり、そのときに慌てて登記をすることとなることがあります。
しかし、その時点で建築時から相当期間が経ってしまうと、建築を発注したことの事実関係を証する書面を紛失してしまったり、施工業者からの引渡し証明書を受けようにも、大工が亡くなっていたり会社が倒産していたりしていて、所有権証明書関係を集めるのに苦労することがあります。
施工業者から引渡証明書を交付してもらえない場合でも表題登記は可能ですが、それに代わる書類をいろいろと集めることになり、手続が煩雑になってしまいます。
ですから、建物を建築した場合は表題登記を行い、所有権の登記も完了させておくことがさまざまなトラブルや後々に起こる面倒さを回避するためにも、良いことだと思います。 

建物表題登記をしないと固定資産税の課税がされない?

建物の表題登記をしないと固定資産税の課税がされないといったことをおっしゃる方もおられますが、あまり期待はできません。
登記情報の表題部を作ることに積極的でない登記所(法務局・国)と違って、固定資産税を課税してくるのは地方公共団体(市区町村)です。
ですから、税金がほしい市区町村は、所有者が恣意的に建物表題登記をしなかったとしても、独自の調査で建物の存在を把握し、固定資産税の課税を行ってきます。
これは、管轄が全国レベルの法務局と、地元レベルの市区町村であるということが大きな理由だと思います。
また、所有者が表題登記をしても直接税収が上がるわけでもなく、むしろ登記申請を処理し登記情報を管理する必要がある国(法務局)よりは、実際に税収を上げるために市区町村がそういった調査に積極的なのはむしろ当然ともいえるのですが、縦割り社会の理(ことわり)でその調査報告を元に登記情報が作成されるということはありません。
しかし、市区町村の調査に基づく課税台帳は、建物の設計・計画図がないまま作成されることも多く、細部の誤認・遺漏などにより、本来の建物とは異なった課税がなされることも少なくありません。
それに、市区町村の固定資産の調査をする調査員は、不動産登記法に精通しているわけではないので、登記情報とは符合(合わない)しない調査をすることもしばしばです。
本来建物として含めないサービスエリアやポーチ部分を床面積に含めたり、附属建物(主建物に附属する建物)を別個の主建物にしてしまったりといった事例をよく見かけます。
ですから、建物を建築した場合は表題登記を所有者自身が行い、所有権の登記も完了させておくことがさまざまなトラブルや後々に起こる面倒さを回避するためには、必要なことではないでしょうか。

建物表題登記の色々

建物の増築・改築

建物を増築・改築をしたときは、実際の建物と登記簿を符合させるため、建物表題変更登記をします。
平屋建を2階建てにしたり、一部を取り壊したとき、別当の車庫などを建築し、それを附属建物とするときなどです。

建物の取毀・焼失

建物を取り壊したり、火災や震災などで全損したときは、建物滅失登記をし、建物の登記簿を閉鎖します。

借地上の建物が焼失・取毀したとき、借地権はどうなる?

借地権が登記されていなくても、借地上に借地権者が登記された建物を所有する場合には第三者に対抗することができますが、その建物が焼失・倒壊などで滅失したときはその対抗力は即座に消滅するのでしょうか?
前記のような場合でも借地権者が、

  1. その建物を特定するために必要な事項
  2. その滅失があった日及び建物を新たに築造する旨

を、当該借地上の見やすい場所に掲示した場合は、滅失の日から2年を限度に再築するまで効力を有します。(借地借家法第10条2項)

建物の用途が変わったとき

住宅の一部を改築して住宅部分の一部を店舗にしたり、倉庫・車庫などを店舗として改装した場合などは、建物の種類変更を原因とする建物表題変更登記をします。

附属建物を分割して主たる建物にする

附属建物を現在の主建物から分割して、別個独立の建物とするには建物分割登記をします。
この登記は下記の"建物分棟・分割登記"と異なり、建物の物理的現況には変化がありません。 

建物を一部取毀して複数の建物にする

  • 建物を一部を取毀して、1個の建物が物理的に複数個の建物になった場合  → 建物分棟・分割登記をします。
  • 建物の一部を取毀して主たる建物と附属建物にする場合  → 建物表題変更登記をします。

建物の合併

2個以上の建物を合併して、主たる建物と附属建物にするときは建物合併登記をします。
これは、下記の"建物合体登記"と異なり、建物の物理的現況には変化がありません。

建物の合体

2個以上の建物の間を増築して、物理的に1個の建物としたときは
  • 合体による建物の表題登記及び合体前の建物の表題登記の抹消
    (所有権の登記のない建物同士の合体 又は 所有権の登記がある建物同士の合体)
  • 合体による建物の表題登記及び合体前の建物の表題登記の抹消並びに所有権保存の登記
    (所有権の登記のある建物とない建物の合体)をします。

建物の区分

普通建物を区分所有法に基づく区分建物に区分することができます。
ただし、建物を区分するには区分された建物の独立性や用途性など制限がありますので、どんな建物も区分建物にできるわけではありません。

【例】

  • 一棟で登記された賃貸マンションを区分して分譲するとき
  • 独立した構造の2世帯住宅を個別に区分する場合